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 うわぁぁぁぁ!!!!

 こんなにいい天気でぽかぽかしているのに、仕事だぁぁぁ!!

 家に“ひきこもり”。

 来年度の授業計画、授業概要、コースデザイン、年度進度表、指示書、先生方の研修、等など…。
 おまけに、明日までに卒業文集の原稿を提出…。

 逃げたくなるぜ!!
 逃げたくなると、仕事とは他のことを始めてしまう。

 このブログもそうだ。
 ついつい、がしゃがしゃとタイプしてしまう。
 ブラインド・タッチができるのも考えもんか…。

 …んでもって、部屋の後片付けなんぞにも現実逃避してしまう。授業計画のための本の整理…。机の上に山積みになった本と押入れにぶちまけてあるテキスト、出て行った妹の部屋に退避させている段ボールの中の入試過去問題とを一気に混ぜて、整理を始める。

 その過程で、クルーザーのカタログが出てきた。
 ヤマハ『CR−28』のカタログ…。
 6年ほど前、マリーナの受付わきに置いてあったのをもらってきたもの。


 海に出たい!!!

 江戸川のマリーナから出港すると、周りに屋形船が停泊していて、曳き波を立てないようにゆっくりと前進する。
 屋形船の密集するところを出ると、一気にフルスロットル。半滑走の状態まで持っていく。ここであまりの気持ちよさに、同乗者たちが一気に雄叫びを上げる。
 ゆっくりと右にカーブする江戸川を滑走すると、下手、遠くにシンデレラ城が見えてくる。

 東京ディズニーランド!!

 ゆっくりと上手へ蛇行していくと、マンションの向こう側から湾岸線・舞浜大橋が見えてくる。その第2橋脚と第3橋脚の間しかプレジャーボートは通れない。
 その隙間に針路を向けて突っ走る…。ここまでくると、潮の香りが、海から来た風にのってバンバン運ばれてくる!

 同乗者の興奮が高まる!

 舞浜大橋をくぐると、下手にシンデレラ城、上手に葛西臨海公園…。
 三枚洲とディズニーランドホテル群との間を抜けると!!!
 目の前に水平線が広がる!!!!

 同乗者、それに私も、一斉に吠える!!!!!

 水平線…。

 東京湾は想像以上に広い!!
 水平線のど真ん中に、ぽつりと浮かんでいる『風の塔』。
 東京湾横断道路の通風口…。

 八景島へ行く時は、このまま『風の塔』をランドマークに針路を進む。
 東京湾運河めぐりの時は、そのまま針路変更。新針路235°、東京灯標をランドマークに進む。
 『凪』の時は、そのまま『東京西航路』に入り、船の科学館とお台場を目指す。けど、飛行機好きな私の場合、大抵は羽田空港の脇、ファイナル・アプローチ中の飛行機の真下でちょっと休憩した後、大井運河に入ってしまう…。

 うぅぅぅん。

 海に出たい!!!!



 このカタログをもらった帰り、たまたまレストラン(っうか食堂)に寄った。そこが偶然!日本語学校の韓国人女学生がアルバイトしているところ!!店長との関係を聞いていたので、遠慮なく店長の『おごり』に甘えてしまった。

 この頃の小論文の授業の時、日本語は上手だけど中身のない文章しか書けないクラス全員を怒ったことがある。そうしたら、逆切れされた。大抵、逆切れするのは中国人と相場が決まっているのだが、大人しく師を敬う韓国人まで逆切れ。受験前でそうとう気が立っていたようだ。

一同『先生は個性個性って言うけど、個性がない人間が大学に入れないのは差別だ!!』

 彼らはすぐに差別を口にする。
 仕方なしに指導…。ホワイトボードにペンで小さな“丸”を書いて、

私『これ、何に見える?』

 一同、沈黙。仕方なく、指名。

A『まるです。』

B『ペンで書いたまるです。』

C『ホワイトボードに書いてあるまるです。』

 だんだんへらへら笑い始める。そこで、

私『だからダメなんだ。それが個性のない答え。大人は頭で考えて正しい答えを出そうとする。けど、もしこれが子どもたち、特に、幼稚園の子どもたちに質問したら?』

 何か、心理学か教育学関連の本で読んで感動した話をそのまま授業で再現。

私『子どもたちは心で感じたことをそのまま、まっすぐに表現する。“お星様!”“てんとう虫!”“ありさんのおうち!” これが心で考えるってこと。』

 聞いてくれた。日本語力上級者とはいえ、部分部分、ホワイトボードに『文字化』させながら話した。てんとう虫は絵まで描いた。

私『そして、考えろ!!…氷が解けると何になる?』

D『水!』

E『水!』

F『水!』

私『…違う! “氷が解けると…春になる”って答えだっていいだろう?』

 沈黙。

私『“氷が解けると何になる?”、“氷が解けると水になる”、“氷が解けると春になる”。どちらの答えが心に響く?大学の先生は、どちらの答えを合格させる?』

 答えは決まっていた。んでもって作文を書かせた。


 前述、食堂で偶然会った韓国女学生、元気がなく休みがちだった彼女の作文。

 『氷が解けると水になります。私はアイスコーヒーが大好きです。けど、アイスコーヒーの氷が解けると味が薄くなってしまいます。飲みたくありません。けど、時には飲まなきゃいけない時があるってことを知っています…。』

 げげっ!!
 なんじゃ、こりゃぁ!!!!

 慌てて学院長(女)に彼女の事情を聞くと…。
 韓国で結婚して、小さな子どもがいる。けど、旦那が酷い男で、離婚して、それでもしつこくて、仕方なく子どもを実家に預けて日本へ逃げてきた女性…。97年のIMFショック以降しばらくの間、韓国からくる学生ってこういう学生がかなりいました。
 事情を聞いちまった以上、一応、私は先生。2人で飲むことに。
 お酒を飲みながら『離婚したんだって?』なんて聞けないし、ただただ普通の話をしながら時間が彼女の口を開かせることを待っていると、ぽつりぽつり…。
 子どもを置いてきちゃったんだぜ!そりゃぁ、苦しいわなぁ…。
 味が薄くなったアイスコーヒーを飲まなければならない時がある。
 愛が薄くなってしまっても…。

 泣きながら話す彼女。私は話を聞いてあげるだけ…。
 美人の女性で、バイト先の店長から告られていて、相手は子どもがいるのも承知で、結婚を前提とした交際を求めているとのこと。それを受けてもいいものかどうか、自分の気持の整理がつかない…。
 そんな女性でした。



 レストラン(っていうより食堂)でレジを打ちながら…。

韓国女学生『先生、クルーザー、買うんですか?』

私『何で?』

韓国女学生『だって、一生懸命に本(カタログのこと)を見てたから。』

私『ははははは(笑って誤魔化すしかない)。』

韓国女学生『買ったら、絶対に乗せてくださいね!!!授業で話してくれた“風の塔”が見たいんです!!』

私『おう!!任せとけ!!!』

 レジを打ちながら話してくれた彼女。もちろん、店長のおごり。

 この約束を果たせず、彼女は韓国へ帰国していきました。
 いや、いつか果たせるときが来ることを信じよう。
 この6年前の約束を…。



 氷が解けると春になる!!!
 春になると桜が咲く!!!!

 東京運河の周りには、桜の木がびっしりと植えられている。
 特に『春のうららの隅田川〜』とは、よく言ったもので、隅田川から眺める川岸の満開の桜は最高!!!!
 こういう時は、曳き波を立てずにちんたら進む。

 桜の木の下には、花見の酔っぱらいたちの宴の声が…。
 海上交通安全法の改正により、港湾内ならどんな場所でも、はたまた、錨泊中であっても、キャプテン(船長)の飲酒が禁止されてしまった!!

 少しさびしい…。

 けど、うららかな春風が頬を優しく撫で、凪の水面からは潮の香りが漂う、春の隅田川をのんびり楽しむのもいいだろう…。


 海に出たい!!!

 のんびりと、優しい春風と潮の香りに抱かれながら、水上からの花見。




 そうだ!






 今年は『風の女神』を誘ってみよう…。









 さぁて、長い長い現実逃避終わり!!仕事、仕事!!!!