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 17の時、ハング・グライダーを始めました。

 空が飛びたい!

 ただ、それだけの理由で…。

 もともと身体が大きく、翼の面積が普通よりも大きい、八畳間と同じくらいのグライダーを抱えて、とぼとぼと山の斜面を登り、飛び立つ練習を繰り返しました。

 けど、何度も何度も走っても、一向に飛び立つことができません。
 丸1日、グライダーを抱えて斜面を登っては走り、登っては走りを繰り返していました。ただひたすら、グライダーを抱えたまま斜面を下まで駆け降りていました。

 一向に飛び立つことができず、凹んでいました。

 『なぜ、自分は飛べないんだろう』

 と…。

 そんなある日、あまりにも飛べずに走ってばかりいる私にインストラクターの先生が切れて、『グライダーを信じるな!』と怒られました。

 何のことか分りません。

 何も分らずに、『登っては斜面を下まで駆け降りる』ことを繰り返していました。

 そして、とうとうしびれを切らした先生が見本を見せてくれました。

 『グライダーを信じるから、飛べないんだ!グライダーがあると思うな!ダウンチューブ(パイロットが握る棒)は握るんじゃない!触るだけなんだ!』

 そう言いながら、実際に飛んで見せてくれました。
 
 ちょっと走っただけでフワッと浮き上がり、浮き上がった瞬間、つかんでいたダウンチューブを手放しました。ハーネスとグライダーをつなぐ一本のワイヤーに、文字通りぶら下がった(ハング)状態で先生は飛びつづけました。もちろん、バランスをとるために触りましたが…。

 そう。

 グライダーの翼は、飛行機の翼とは違います。飛行機の翼は、風を切る翼。本当の翼ではありません。
 グライダーの翼は本当の翼。
 鳥の翼を見てみよう。鳥の翼は、風を切るための翼ではありません。風をとらえる翼。風を操る翼。風と一つになる翼。
 風を切って、浮力を得るのは科学の力。ベルヌーイの定理。
 飛行機の生みの親としてライト兄弟が歴史に残っているのは、科学の力で人間が風を支配したから。
 その翼が、大勢の人間を殺してきた。
 空を飛んだ人物は、ライト兄弟の前にもいました。
 リリエンタールがその人です。彼は、風をとらえる翼で飛んでいました。


 ハンググライダーの翼で、風を切って飛ぼうとしたら、カールルイス(当時、陸上オリンピックで世界最速)よりも速く走らなければならないそうです。

 翼を信じるんじゃない。翼は自分の一部。

 そう思って、ただ走るだけ。

 そう念じて走ってみました。

 すると突然、翼がうねりを上げて震え始めました。
 初めて耳にする音に驚き、驚いた瞬間、一気に空中へ引っ張られました。

 みるみるうちに、地面が足から遠ざかっていきました。

 …飛びました!

 そして、着地。

 飛んだ瞬間、感激?感動?

 いいえ。

 ただただ怖かったです。

 感動は、着地した後から襲ってきました。




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 『翼を信じて大空へ飛び立て!!』

 これは、心のない大人たちが頭で考えた言葉だ。
 こんなこと、信じちゃダメだ!!!

 翼を信じて走ったら?

 そう。

 飛び立つこともできず、ただ地面を走り続けるだけ。
 翼で風を切ろうとしても無駄。

 学歴という翼を信じて走る!
 俺はハンサムだから、その翼を信じて走る!
 俺は特技があるから、その翼を信じて走る!

 こんなこと考えていたら、一生、地面を走り続けるだけ。

 翼は信じるものじゃない。
 翼は自分の一部。
 右手で箸を持つ時、右手の力を信じて持つ奴はいない。

 持っている翼で風を切るんじゃない。
 何も考えず、ただ、真っ直ぐに、走るだけ…。

 そうすれば、ある時、翼がうねりを上げて震えだすだろう。

 翼が風をとらえた瞬間。

 そして、一気に自分を大空へ持っていこうとするだろう。

 けど、忘れるな!
 初めて飛んだ時、本当に怖い!!

 『初めて飛んだ時の感激!』

 こんなの大嘘!!

 その怖さに負けて逃げてしまったら、一生、地面を走ることになるだろう。
 ためらってしまって何もしなかったら、一生、飛び立つことはできないだろう。
 『いい経験になった』と強がりを言いながら、自分に言い訳をしながら生きていくしかないだろう。
 毎日、毎日、酒を飲んで馬鹿騒ぎし、遊びまわり、一生、地面を這いつくばるしかない。

 怖くて飛ぶ勇気がなくなった時、その時初めて翼を信じるんだ。そして、再び風をとらえて飛び立て。そうすれば、たとえ初めのころは低いところを飛んでいても、やがて、大空へと舞い上がっていくだろう。

 風と一つになった時、君たちの夢がかなう。


 『翼を信じて大空を目指せ!!』

 こんな言葉を信じるな。



 結局、一生、地面を走り続けることしかできない輩が、必死に自分の翼を自慢している。
 その惨めな姿を見て、反面教師とせよ。



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