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空が飛びたい!
ただ、それだけの理由で…。
もともと身体が大きく、翼の面積が普通よりも大きい、八畳間と同じくらいのグライダーを抱えて、とぼとぼと山の斜面を登り、飛び立つ練習を繰り返しました。
けど、何度も何度も走っても、一向に飛び立つことができません。
丸1日、グライダーを抱えて斜面を登っては走り、登っては走りを繰り返していました。ただひたすら、グライダーを抱えたまま斜面を下まで駆け降りていました。
一向に飛び立つことができず、凹んでいました。
『なぜ、自分は飛べないんだろう』
と…。
そんなある日、あまりにも飛べずに走ってばかりいる私にインストラクターの先生が切れて、『グライダーを信じるな!』と怒られました。
何のことか分りません。
何も分らずに、『登っては斜面を下まで駆け降りる』ことを繰り返していました。
そして、とうとうしびれを切らした先生が見本を見せてくれました。
『グライダーを信じるから、飛べないんだ!グライダーがあると思うな!ダウンチューブ(パイロットが握る棒)は握るんじゃない!触るだけなんだ!』
そう言いながら、実際に飛んで見せてくれました。
ちょっと走っただけでフワッと浮き上がり、浮き上がった瞬間、つかんでいたダウンチューブを手放しました。ハーネスとグライダーをつなぐ一本のワイヤーに、文字通りぶら下がった(ハング)状態で先生は飛びつづけました。もちろん、バランスをとるために触りましたが…。
そう。
グライダーの翼は、飛行機の翼とは違います。飛行機の翼は、風を切る翼。本当の翼ではありません。
グライダーの翼は本当の翼。
鳥の翼を見てみよう。鳥の翼は、風を切るための翼ではありません。風をとらえる翼。風を操る翼。風と一つになる翼。
風を切って、浮力を得るのは科学の力。ベルヌーイの定理。
飛行機の生みの親としてライト兄弟が歴史に残っているのは、科学の力で人間が風を支配したから。
その翼が、大勢の人間を殺してきた。
空を飛んだ人物は、ライト兄弟の前にもいました。
リリエンタールがその人です。彼は、風をとらえる翼で飛んでいました。
ハンググライダーの翼で、風を切って飛ぼうとしたら、カールルイス(当時、陸上オリンピックで世界最速)よりも速く走らなければならないそうです。
翼を信じるんじゃない。翼は自分の一部。
そう思って、ただ走るだけ。
そう念じて走ってみました。
すると突然、翼がうねりを上げて震え始めました。
初めて耳にする音に驚き、驚いた瞬間、一気に空中へ引っ張られました。
みるみるうちに、地面が足から遠ざかっていきました。
…飛びました!
そして、着地。
飛んだ瞬間、感激?感動?
いいえ。
ただただ怖かったです。
感動は、着地した後から襲ってきました。
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『翼を信じて大空へ飛び立て!!』
これは、心のない大人たちが頭で考えた言葉だ。
こんなこと、信じちゃダメだ!!!
翼を信じて走ったら?
そう。
飛び立つこともできず、ただ地面を走り続けるだけ。
翼で風を切ろうとしても無駄。
学歴という翼を信じて走る!
俺はハンサムだから、その翼を信じて走る!
俺は特技があるから、その翼を信じて走る!
こんなこと考えていたら、一生、地面を走り続けるだけ。
翼は信じるものじゃない。
翼は自分の一部。
右手で箸を持つ時、右手の力を信じて持つ奴はいない。
持っている翼で風を切るんじゃない。
何も考えず、ただ、真っ直ぐに、走るだけ…。
そうすれば、ある時、翼がうねりを上げて震えだすだろう。
翼が風をとらえた瞬間。
そして、一気に自分を大空へ持っていこうとするだろう。
けど、忘れるな!
初めて飛んだ時、本当に怖い!!
『初めて飛んだ時の感激!』
こんなの大嘘!!
その怖さに負けて逃げてしまったら、一生、地面を走ることになるだろう。
ためらってしまって何もしなかったら、一生、飛び立つことはできないだろう。
『いい経験になった』と強がりを言いながら、自分に言い訳をしながら生きていくしかないだろう。
毎日、毎日、酒を飲んで馬鹿騒ぎし、遊びまわり、一生、地面を這いつくばるしかない。
怖くて飛ぶ勇気がなくなった時、その時初めて翼を信じるんだ。そして、再び風をとらえて飛び立て。そうすれば、たとえ初めのころは低いところを飛んでいても、やがて、大空へと舞い上がっていくだろう。
風と一つになった時、君たちの夢がかなう。
『翼を信じて大空を目指せ!!』
こんな言葉を信じるな。
結局、一生、地面を走り続けることしかできない輩が、必死に自分の翼を自慢している。
その惨めな姿を見て、反面教師とせよ。
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